ガートナー ジャパン
メインメニュー ホーム リサーチ コンサルティング ベンチマーク エグゼクティブ プログラム イベント 会社情報 メインメニュー
SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

2014年の展望:「スピード」と「割り切り」が一層求められるエンタプライズ・アプリケーション

アプリケーション (APP) /APP-14-12
Research Note
K. Motoyoshi, K. Iijima, Harutoshi Katayama, R. Narisawa
掲載日:2014年7月8日/発行日:2014年2月20日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年10月28日(火)〜30日(木)に開催する 「Gartner Symposium/ITxpo 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


日本におけるエンタプライズ・アプリケーション領域では、クラウドに代表される新興テクノロジとグローバル化の急速な進展により、アプリケーションの開発、統合、展開における従来のアプローチが急速に陳腐化しつつある。


要約

主要な所見

  • 企業競争の激化に伴う差別化領域でのアプリケーション提供や、ユーザー部門主導でのサービスとしてのソフトウェア(SaaS)導入の拡大に伴い、アプリケーション開発/統合においてスピードを求める圧力が一層強まる。
  • アプリケーション開発/統合のスピードを上げるための手段として、アジャイル手法や開発支援ツール、クラウド上の統合テクノロジであるサービスとしての統合プラットフォーム(iPaaS)といった環境が整いつつあるため、従来の手法やテクノロジのみにとらわれない新たなアプローチが求められる。
  • アプリケーションの海外展開を進めてきた多くの企業では、これまで拠点ごとに個別の製品を導入してきたが、全体最適化やリスク・マネジメントの観点から、今後はグローバル・ガバナンスの強化が課題となり、拠点別の要求を多少度外視することになっても製品の共通化を図る動きが強まる。
  • ERPに大幅なアドオンを施す大企業は増加し続けるが、そうした企業では総合保有コスト(TCO)の増大が問題となり、タイムリーな新機能/テクノロジの採用に支障を来すことになる。

推奨事項

  • アプリケーションの開発期間を短縮するために、開発手法、開発ツール、テスト自動化などの中から自社に適したアプローチを採用するとともに、プロジェクト体制についてもビジネス部門の関与や迅速な意思決定を促す仕組みを構築する。
  • SaaSの導入スピードに追従するためのアプリケーション統合の選択肢として、クラウド上の統合テクノロジであるiPaaSの活用を検討し、オンプレミスの既存統合テクノロジとのハイブリッド化に向けたロードマップを策定する。
  • 拠点間で合理的な理由なく重複している、あるいは自社の競争優位に直結しない機能については、ガバナンスやTCOの観点から、個別最適化の追求や過度のアドオンが許容されなくなっていくことを踏まえ、共通化と標準化を強く意識した計画を策定/実行する。
  • その際、ペース・レイヤ・アプリケーション戦略に基づき、自社の競争優位に結びつく差別化または革新レイヤに分類される機能と、他社と同様で構わない記録レイヤの機能を峻別し、継続的なアプリケーション・ポートフォリオの見直しと進化を図る。


目次

 戦略的プランニングの仮説事項

 分析

  要旨

  戦略的プランニングの仮説事項



戦略的プランニングの仮説事項

2017年までに、日本におけるエンタプライズ・アプリケーション開発プロジェクトの80%が1年以内の完了を求められるようになる。

2017年までに、ユーザー主体でSaaSを新規導入する、もしくはSaaSとの新規連携が必要となる大企業の60%以上において、SaaSとオンプレミスの統合にSaaS導入並みのスピードと安価を求める圧力が、iPaaS利用の促進要因となる。

2017年までに、海外拠点を持つ日本企業の60%がエンタプライズ・アプリケーションの集約化に着手するが、その半数が戦略、組織体制、人材の欠如によって失敗する。

2017年までに、ERPを利用している日本の大企業の40%以上が機能の大半にアドオンを施すが、TCOの増大に伴って追加投資の正当化が困難になる。


分析

要旨

本リサーチノートでは、2014年の日本のエンタプライズ・アプリケーション領域における展望 (2017年に向けて予想される変化の方向性)のうち、主要なものを紹介する。2014年のエンタプライズ・アプリケーションに関する調査は、「アプリケーション開発」「アプリケーション・インフラストラクチャ」「日本企業の海外拠点向けアプリケーション投資」「ERPとエンタプライズ・スイート」という4つの領域にフォーカスして進めており、本リサーチノートでは、各調査領域から最も影響が大きいと考えられる展望を1つずつ選択し、紹介する。

近年、日本企業は、クラウドやモバイルをはじめとする新興テクノロジの台頭やグローバル競争の激化を受け、既存のエンタプライズ・アプリケーション環境をスピーディに変革し、進化させていくことが必要になっている。

こうした外部環境の変化を踏まえ、本リサーチノートでは、アプリケーション開発期間の短期化、ユーザー主導によるクラウド上のアプリケーション統合の進展、グローバルでのアプリケーション共通化、パッケージ標準機能の最大活用といったトレンドに関する展望を紹介している。これら個々の領域の動きに共通するキーワードを2つ挙げるとすれば、IT部門には、これまでよりも一層「スピード」と「割り切り」が求められる、ということである。

IT部門に対するこうした新たな要求は、2017年にかけてますます強まっていくと予想されるが、「スピード」と「割り切り」を実現するためのテクノロジ、手法、戦略なども発展しているため、本リサーチノートで提示している推奨事項を実践することで、要求を先回りする形で積極的かつ能動的に個々のトレンドに対処することも可能である。


戦略的プランニングの仮説事項

戦略的プランニングの仮説事項: 2017年までに、日本におけるエンタプライズ・アプリケーション開発プロジェクトの80%が1年以内の完了を求められるようになる。


分析:片山 治利


主要な所見:

  • 日本において現在実施中あるいは予定されているエンタプライズ・アプリケーション開発プロジェクト(スクラッチ開発、パッケージ導入、SaaSなどを含む業務アプリケーション導入プロジェクト)は1年を超える期間のものが多い(ガートナーでは4割近いとみている)が、2017年までにはそれらのプロジェクトが完了し、それ以降は拡張保守ベースのプロジェクトが増える。
  • 他社との差別化、新しい商品やサービスの提供につながるアプリケーションの開発/デリバリに、今までより一層スピードが求められる。1年を超えるような新規のエンタプライズ規模のアプリケーション開発は、要件の変更、コスト、品質、進捗などプロジェクト管理全般が難しくなりやすく、忌避されるようになる。
  • ガートナーのグローバルの調査 (IT Key Metrics)では、調査対象プロジェクトの約80%が1年以内で完了している。日本企業がグローバルの動向を後追いすることは一般的に見られる傾向であり、今後4年間で海外と同程度の状況になる可能性は十分にある。
  • アジャイル手法や開発支援ツールなど、アプリケーション開発期間の短縮に効果のあるアプローチや環境はそろいつつある。かつては1年以上かかっていた開発期間を1年程度に短縮することも可能になってきた。加えて、先進的にアプリケーション開発期間の短縮に取り組んだ企業の事例が増加するにつれて、他の企業も徐々にアプリケーション開発の短縮化に目を向けるようになることが予想される。

市場への影響:
先行企業によるアプリケーション開発の短期化の事例が増え、認知されるにつれて、他のユーザー企業のIT部門やシステム・インテグレーター(SI)の多くはアプリケーション開発期間の短縮化を意識せざるを得なくなる。特に、アプリケーション開発期間の短縮が市場での競争力強化にもつながることが認識されれば、多くの企業がより真剣に取り組むことになる。従来の手法に固執すると市場で淘汰されていくことになるため、ユーザー企業は新しい手法やツールなどのアプローチを積極的に採用するようになり、SIやベンダーは対応を迫られる。また、アプリケーション開発期間の短縮化はユーザー企業内部のIT部門、ビジネス部門の双方に意識改革を迫り、アプリケーション開発プロセスをはじめアプリケーション・ガバナンスの変革が求められることになる。


推奨事項:

  • アプリケーション開発の短縮化が必要であるという問題認識を企業で醸成する。アプリケーション開発期間を短縮するために、開発手法、開発ツール、テスト自動化などのアプローチを検証し、自社に適したアプローチを採用する。
  • SIやベンダーに外注する場合も、開発期間の短縮を意識した提案を要求する。提案要請書(RFP)で開発期間を優先する点を明示することも有効である。
  • プロジェクト体制の側面からも開発の迅速化を支援する。ビジネス部門の関与、要件の絞り込み、迅速な意思決定に関する仕組みを構築する。プロジェクト管理においても、効果的なツールを用いた進捗や課題などの可視化、課題への迅速な対応を実践する。

関連リサーチ:

「ケーススタディ:ゼンショーの競争力強化を実現する基幹システム再構築へのチャレンジ − UI開発の高速化」(APP-12-54、2012年5月25日付)

「アプリケーション開発内製化のベスト・プラクティス:アプリケーション自動生成ツールを活用した鈴廣蒲鉾本店」(APP-13-53、2013年4月15日付)


戦略的プランニングの仮説事項:2017年までに、ユーザー主体でSaaSを新規導入する、もしくはSaaSとの新規連携が必要となる大企業の60%以上において、SaaSとオンプレミスの統合にSaaS導入並みのスピードと安価を求める圧力が、iPaaS利用の促進要因となる。


分析:飯島 公彦


主要な所見:

  • 従業員数2,000人以上の企業の60%以上が、パブリック・クラウドを利用するメリットとして、1) 運用コストの削減、2) 機能利用が安価、3) 機能利用の迅速性をそれぞれ選択している。
  • SaaS利用の拡大に伴い、SaaSとオンプレミス・アプリケーションとの連携を図る必要性が増大している。
  • SaaSの導入時、「IT部門の対応に時間がかかる」「費用が掛かる」「運用を心配したくない」との理由から、IT部門に頼らずユーザー部門で対処することが多いが、同様の理由で、オンプレミス・アプリケーションとの連携についても、IT部門が関与せずユーザー部門で(外部ベンダーの助けを借りる場合を含む)、iPaaSを利用して実現するケースが登場している。
  • クラウド上に配備したアプリケーション(SaaS)で、顧客データなどクラウドへの常時配置が難しいオンプレミス・データを、画面やワークフローなどからリアルタイムで利用するために、クラウド上のアプリケーションとオンプレミス・アプリケーションのリアルタイム連携を必要とする企業が登場している。

市場への影響:

SaaSユーザーには、SaaS利用の大きなメリットの1つである「利用開始までのスピードの速さ(導入期間が短い)」を最大限に享受するために、アプリケーション統合にも「短期間での実現」を求める傾向がある。この傾向は、モバイルやクラウド上でのワークフローの利用拡大に伴い、今後さらに強まろうとしている。

しかし、IT部門が深く関与すべきオンプレミス上の統合を主体とする統合アプローチは、クラウド連携においては、スピードとコストの観点からユーザーが敬遠しがちである。ユーザーは、クラウド上で統合機能がサービスとして提供されるiPaaSへの関心を強め、iPaaSを選択し、統合ロジックがクラウド上で実装される状況が増える。iPaaSの多くは統合の生産性が高く、中には、統合のスキルをほとんど要しないものも存在する。セキュリティに関してはその都度検討が必要となるものの、iPaaSにセキュリティの追加オプションが提供されている例もあり、オンプレミスに多大な追加投資をせずに、一定のセキュリティ・レベルを実現する選択肢も存在する。

iPaaSを選択する状況は、いずれSaaSを利用するユーザー部門ごとに見られるようになり、企業全体としてのアプリケーション統合の複雑性や多様性はさらに増し、IT部門がその全体像を把握できないという事態をもたらす。

こうしたことから、IT部門は、アプリケーション統合の対象となるクラウド上のアプリケーションとオンプレミス・アプリケーションの連携について、オンプレミスの統合テクノロジだけのアプローチでは、ユーザーが求めるスピードの実現には不十分であることを認識するであろう。

しかし、仮にユーザーの求めるスピードを実現できたとしても、iPaaSではオンプレミス統合に関する複雑で多様な要件を標準で満たすことが難しい場合が多く、また要件が厳しい安定的なサービス・レベル合意を満たすことができない可能性があり、オンプレミスの主要なパッケージ・アプリケーションに対応するアダプタの選択肢も乏しい。

このため企業では、統合ロジックを実装する手段として、クラウド上のiPaaSとオンプレミス上の統合テクノロジの両方を併用する必要性が増大する。

また、オンプレミスで統合を行う迅速性と柔軟性の向上にとって足かせとなっているのは、オンプレミスのアプリケーション(やデータ)におけるアクセス・インタフェースへの手直し(保守)に要する時間とコストである。SaaSやクラウドのスピード感に追いつくためには、オンプレミスのアプリケーション・インタフェースのサービス化が1つの有効なアプローチである。また、データは、業務機能に応じた処理が必要となるケースがほとんどであるため、変更の局所化や影響範囲の可視化のために、アプリケーションのサービス・モジュール化を促進することが有効である。このため、サービス指向アーキテクチャ(SOA)の有用性が、クラウドのスピードを実現する上で高まる。

アプリケーション統合テクノロジや統合サービスを提供するベンダーも、こうした動向に対応するために、iPaaSとオンプレミス上の統合の両方を提供することが必要となる。さらに両者の統合の生産性を高め、統合スキルの敷居を下げるとともに、両者間の相互運用性や統合性、および全体としての管理の容易性などの向上を図ることが求められる。


推奨事項:
ユーザー企業のIT部門は、統合ロジックを実装する手段としてのiPaaSの有効性を認めつつ、オンプレミスの統合テクノロジの有用性も再確認し、下記のアクションを取る。

  • SaaSの導入スピードに追従できるアプリケーション統合を実現するための選択肢として、アプリケーション統合のロードマップにiPaaSの利用を含め、オンプレミス統合テクノロジとの併用(ハイブリッド)について最適なアプローチを検討する。
  • SaaSの導入スピードに追従できるアプリケーション統合を実現するために、アプリケーションのSOA化(モジュール化およびインタフェースのサービス化)を促進する。特に、データ・アクセス領域におけるインタフェースのサービス化(データ・アクセスのサービス・モジュール化)を推進する。

関連リサーチ:

「アプリケーション・インフラストラクチャのハイプ・サイクル:2013年」(APP-13-169、2013年11月25日付)

「サービスとしてのプラットフォームのハイプ・サイクル:2013年」(APP-13-161、2013年11月5日付)

「アプリケーション統合プロジェクトに適した手法の見分け方」(SOR-13-51、2013年10月25日付)

「ITリーダーはSAPクラウド・サービスの統合戦略に多様なアプローチを併用すべき」(APP-13-136、2013年9月13日付)

「ITリーダーが知っておくべきこと:クラウド・サービス統合の課題に積極的に対処する」(APP-13-132、2013年9月10日付)

「プロジェクト開始前に従うべきアプリケーション統合ガイドライン」(APP-13-127、2013年8月30日付)

「クラウド/オンプレミスのハイブリッドERP環境で統合を管理する際のベスト・プラクティス」(APP-13-125、2013年8月23日付)


戦略的プランニングの仮説事項:2017年までに、海外拠点を持つ日本企業の60%がエンタプライズ・アプリケーションの集約化に着手するが、その半数が戦略、組織体制、人材の欠如によって失敗する。


分析:成澤 理香


主要な所見:

  • 昨今の円安傾向や進出先のカントリー・リスクにより、日本企業の海外展開には逆風も見られるが、中長期的には、?子高齢化に伴う内需縮小や、グローバル規模での競争激化、生産や調達および販売といった経済活動の新興地域へのシフトなどを背景に、多くの日本企業にとって引き続き事業の海外展開が最優先課題の1つとなる。
  • 海外展開がいったんピークを迎え、日本企業は、効率化と全体最適化、リスク・マネジメントを背景に、足元のグローバルITガバナンスの強化フェーズに入っている。
  • ガートナーの調査によれば、現状では、調査対象となった業務アプリケーション製品のうち最も標準化が進んでいる「財務・会計管理」ですら、60%の企業が「各拠点で個別の製品を利用」していると回答している。今後は製品の集約を図る動きが活発化することが予想される。
  • アプリケーションの集約化への関心が高まる一方、実行フェーズに求められる戦略、組織体制、人材の欠如を認識しないまま安易に取り組む例も見られる。

市場への影響:

アプリケーション製品の集約化を試みる企業が増えることにより、グローバルに製品を展開するベンダーにとっては、新たな市場機会が生まれるであろう。しかしながら、一方で、ユーザー企業において現在、IT戦略、組織体制、IT人材育成に本社がグローバルな視点から取り組んでいる例は限定的である。特に、IT人材育成について本社が把握している比率は、ガートナーの調査によれば、わずか17%にすぎない。さらに、海外展開の課題として「海外拠点のITの状況把握」ができていないという企業が53%を占めている。グローバルのITの状況を正確に把握し、多様性に富んだ組織をリードできるIT組織は現状でもわずかしか存在していない。すなわち、グローバルでの企業成長に寄与するIT支援体制を構築するまでには、しばらく時間を要すると考えられる。

こうした戦略、組織体制、人材が伴わないまま、安易にアプリケーションの集約化を進めると、スケジュールの遅延や予算の超過が発生するリスクが高まる。さらには、地域の事情に合った機能が実現できていないため、ライセンスは購入済みであるにもかかわらず「使われないアプリケーション」を生み出すことにつながる。これは、単に無駄なコストが発生するだけでなく、拠点が本社の知らないまま独自のアプリケーションを使い続けるダブル・スタンダードを取ることにより、現在よりもガバナンスが低下するリスクも生まれる。こうした失敗の経験は、長期的に拠点からの支援を維持することをより一層難しくする。


推奨事項:

  • ITリーダーは、世界のグローバル・カンパニーと伍してビジネスを勝ち抜くため、グローバル化のロードマップを明らかにする。
  • 海外拠点におけるITの実態の正確な把握に努めるとともに、自社がアプリケーション集約化を推進し、効果を生み出すための組織能力が備わっているのかを客観的に判断する。
  • アプリケーションの領域ごとに目標とするガバナンス・レベルを設定し、海外拠点における戦略の整合と共通課題の把握を行う。
  • ITリーダーは、加速するグローバル・ビジネスをリードするための人材ニーズに合った育成プログラムの開発と導入を行うとともに、グローバルでの企業の最適化と成長にITがいかに貢献できるかを経営者や他の関係者に説明し、理解を得る。

関連リサーチ:

「日本の製造業における海外展開とIT投資動向」(DMCSDMSSDMVC-JA-DP-1301、2013年1月10日付)
(上記のレポートを参照するには、ITデマンド・リサーチのサービスをご購入いただく必要があります)

「日本企業の海外拠点におけるIT投資をどのようにサポートすべきか (Report Highlight)」(ITD-09-32、2009年8月25日付)

「ツールキット:ビジネス・アプリケーション・ガバナンスのガイドライン」(APPS-09-02、2009年3月31日付)


戦略的プランニングの仮説事項:2017年までに、ERPを利用している日本の大企業の40%以上が機能の大半にアドオンを施すが、TCOの増大に伴って追加投資の正当化が困難になる。


分析:本好 宏次


主要な所見:

  • ガートナーITデマンド・リサーチが2009年5月に実施した調査によれば、ERPの利用機能の5割以上にアドオンを実施していた従業員数1,000人以上の日本の大企業は17%であったが、2013年に実施した調査では31%へと増加した。
  • 今後は以下の要因により、5割以上のERP機能にアドオンを施す大企業の割合は増加し続ける。
    • 販売/生産管理など、企業ごとに業務プロセスの差異が大きい領域での利用
    • ERP の利用経験が乏しい海外拠点や子会社への導入
    • 効果的なERP 導入/プロジェクト管理の欠如
    • 厳格なERP 要件管理のプロセスやガバナンスの欠如
    • エンドユーザーにおけるERP機能/導入プロセスへの無理解
    • 適切なエンドユーザーのキーパーソンの関与不足など
  • 上記の結果、アドオンの割合が5割を超える大企業の多くで、不具合発生時のトラブルシューティング、パッチ適用、バージョンアップといった作業における影響分析やテストの工数が膨らみ、TCOが増大する。ガートナーには、このような状況に陥って苦しんでいる大企業からの相談が既に寄せられているが、今後、同様の企業が一層増加し、パッチ適用やバージョンアップのコストを、経営陣やエンドユーザー部門に対して正当化することが困難になり、タイムリーな新機能/テクノロジの採用に支障を来すことになる。

市場への影響:

ERPの導入/運用に費やされるTCOと追加投資の正当化が困難になることで、現在、一部の企業が直面している以下のような課題に、より多くの企業が直面することになるであろう。

  • 新興テクノロジ・トレンドへの取り組みの遅れ:多くのERP製品では、クラウド、モバイル、ソーシャル、インフォメーション(アナリティクス、ビッグ・データなど)をはじめとする新興テクノロジに対応するために、最新パッチ/バージョンの適用が前提となっている。
  • ERPによる効果の減殺:国内外の拠点や対象業務など、ERP適用範囲の拡大を試みる企業において、当初想定していた展開先や業務領域に計画どおりERPを導入できないことによって、スイート製品としてのERPが持つ機能の豊富さ、統合性、標準化、共通化、規模の経済性といったメリットが著しく阻害されることになる。また、アドオンの増大は安定稼働にも悪影響を及ぼすことが懸念される。
  • エンドユーザーの離反:アドオンによってエンドユーザーの要件をきめ細かく取り込むことで一時的にユーザーの満足度を高めることができたとしても、上記の2点を背景として、結果的にERPは時代遅れで使いづらいものといった印象がエンドユーザーに定着し、ERPを十分に利用してもらえない恐れが高まる。

上記のような問題が深刻な一部の企業では、利用中のERPを他のものに置き換える動きが進むと考えられる。また、ERPの導入/運用に携わるプロバイダーは、アドオン機能の開発支援によって短期的にはビジネスが維持されるものの、中長期的にはユーザー企業からの投資が先細りする恐れがあることに加え、クラウドを中心とする新興テクノロジ・トレンドに対応したビジネス転換の遅れ、ユーザー企業からの信用低下などにより、ビジネス機会を失うことにもなりかねない。


推奨事項:

  • 業務や要件と合わない部分はすべからくギャップと見なすのではなく、まず自社が必要とするERP機能が、ガートナーによるペース・レイヤ・アプリケーション戦略の記録、差別化、革新という3つのレイヤのうち、いずれに属するのかをエンドユーザーのキーパーソンと精査し、合意した上で分類する。
  • その上で、アドオンによる対応を行う部分は差別化(または革新)レイヤに分類された機能のみとし、記録レイヤに分類された機能については、著しくエンドユーザーの生産性を阻害しないもの、および顧客や取引先、規制当局など外部のステークホルダーへの影響が少ないものは、極力ERPの標準機能に業務を合わせる。
  • 併せて、自社内の業務および機能の標準化を図る手段としてテンプレート・アプローチの採用を検討し、ERPの導入中や導入後に継続して生じる要件の変更/追加要望を適切に管理するために効果的な要件のガバナンス・プロセスを定義し運用する。

関連リサーチ:

「ペース・レイヤリングをERP戦略に適用する」(APP-12-69、2012年7月10日付)

「Oracleで成功するためのペース・レイヤリング・アプローチ」(APP-13-177、2013年12月13日付)

「SAPで成功するためのペース・レイヤリング・アプローチ」(APP-13-178、2013年12月13日付)

「グローバルERPテンプレート:範囲と内容のガイドライン」(APP-12-05、2012年1月25日付)

「グローバルERPテンプレート:管理とメンテナンス」(APP-12-06、2012年1月25日付)



APP: APP-14-12
※本レポートの無断転載を禁じます。


←INDEXに戻る

 

gartner.com
TOP OF PAGE
Copyright