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注目すべき5つの「SMART」テクノロジ

ITマネジメント (ITM)/ITM-14-09
Research Note
S. Prentice
掲載日:2014年5月27日/発行日:2014年5月15日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年6月11日(水)に開催する 「ガートナー アウトソーシング & ITマネジメント サミット 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


ガートナーは、今後5年にわたってビジネスに大きく影響を及ぼすと考えられる、5つの新たなテクノロジ・トレンドを特定し、各テクノロジの頭文字から「SMART」テクノロジと呼んでいる。CIOやビジネス・リーダーは、新たな機会や課題を特定するために、これらのトレンドを評価すべきである。

要約

主要な課題

  • SMART (S:センサおよびモノのインターネット、M:モノづくりマシン、A:ヒューマン・オーグメンテーション、R:ロボット工学、T:考えるマシン) トレンドは、新たなデジタル産業経済の発展とデジタル・ビジネスの進歩に大きな影響を与える。
  • 調査によれば、すべての業界および地域にわたる、ほぼすべての企業において、少なくとも2つ (多くの場合3つ以上) のトレンドによって、大規模な破壊的な動き (および新たな収益創出の機会) が生じる。
  • これらのトレンドはすべて初期段階にあり、致命的な技術的障害に直面してはおらず、現在のところ初期の形で利用可能である。しかし、各トレンドによって、規制、適法性、倫理、道徳といった非技術的な領域における重要かつ困難な問題が生じる。これによって、重要かつ継続的な課題がITリーダーやビジネス・リーダーにもたらされる。

推奨事項


 CIOおよびビジネス・リーダーは、以下を行う。
  • 未着手の場合は、テクノロジの本格的な検討と、各テクノロジに関する脅威の評価を直ちに開始する。
  • これらのトレンドによる自社および業界への影響について、総合的に優先順位の決定と評価を行い、より詳細な評価のためのパイロット・プロジェクトを開始する。
  • 既存のビジネス戦略計画およびデジタル戦略計画を再検討し、こうしたトレンドによってどのように (そしてどの程度) 前提が変化し、これまで予期していなかったリスクや脅威がもたらされ、新しい収益の機会が得られるかを確認する。必要に応じて、戦略を修正する。


目次

 分析

   センサ・ネットワークとモノのインターネット
   モノづくりマシン
   ヒューマン・オーグメンテーション
   ロボット工学
   考えるマシン
   SMARTテクノロジを結び付ける共通の脅威
   SMARTテクノロジとデジタル・ビジネス
   SMARTテクノロジによる影響を理解する
   CIOおよびビジネス・リーダー向けの推奨事項

 推奨リサーチ



分析

多くの企業は、(ガートナーのハイプ・サイクルなどのさまざまな手法や手段を利用して) 将来予測やテクノロジの評価に時間や資源を費やしている。しかし、個々のテクノロジが相互に複雑に影響しているため、広範な領域に対する評価アプローチが求められる。その範囲は、表層的または概要レベルにとどまると誤解すべきではなく、むしろ包括的および全体的であると考えるべきである。本リサーチノートでは、5つの広範かつ破壊的なトレンドを紹介する。これらのトレンドは、技術面で積極的な (タイプA) 企業の興味を引くのみならず、これらのトレンドを詳細に調査して増収の取り組みに着手したり新たな市場に参入したりしようとする、あまり積極的ではない採用企業 (主流、タイプBの企業) にも影響を与えると同時に、少なからず機会を提供する。

ガートナーでは、これらのテクノロジ・トレンドを列挙し、5つのテクノロジ・トレンドすべてに共通して情報、知識、意思決定を特に重視していることを表現するために、「SMART」という略語を使用する。以下にそのトレンドを示す。

  • Sensor Networks and the Internet of Things (センサ・ネットワークとモノのインターネット)
  • Maker Machines (モノづくりマシン。3Dプリンティングと積層造形技術を含む)
  • Augmented Humans (ヒューマン・オーグメンテーション。例:ウェアラブル・デバイスおよび埋め込みデバイス、人間の能力の神経学的および生理学的強化に関する発展しつつある探究)
  • Robotics (ロボット工学。例:単純な産業用倉庫ロボット、人型ロボット、自律走行車を含む現世代の自律デバイス)
  • Thinking Machines (考えるマシン。例:複雑な情報からの関連性の発見および評価に基づいて意思決定を支援または実行する、AppleのSiriやIBMのWatsonに代表される、テクノロジの能力を着実に進歩させつつあるインテリジェントなシステム)

多くの新たなテクノロジ分野と同様に、市場の発展に伴って、用語のばらつきを想定しなければならない。例えば、「考えるマシン」という用語の使用は、機械が考えるという擬人化された能力を連想させるため、一部の者によって不正確と見なされる。ガートナーのリサーチノートでは、こうしたシステム (およびロボット工学に含めている一部の自律デバイス) を、より広範な「スマート・マシン」のカテゴリに含めている。これらのテクノロジ・トレンドの名称や多くの詳細テクノロジの分類方法は、大した問題ではなく、その潜在的な影響に関する本格的な調査を延期または回避するための口実としてはならない。

独自の内部調査および評価プロセスに基づき、ガートナーでは本リサーチノートで解説する5つのトレンドを、極めて重要かつ影響の大きいものとして提示する。これらは同時に、「力の結節」(Nexus of Forces:クラウド、インフォメーション、ソーシャル、モバイルという4つの力の強固な結び付き) によって表現される現在の重要なトレンドを置き換えるものでも、無価値にするものでもない。実際には、こうした現在のトレンドは、SMARTテクノロジの企業および社会による受容を促進および迅速化する環境や状況を作り出す。同様に、時間の経過に伴い、これらのSMARTテクノロジによる潜在的な影響に匹敵するさらなる重要なトレンドが、やがて明らかになる可能性がある。



センサ・ネットワークとモノのインターネット
モノのインターネットとは、インターネットに接続されているインテリジェントなオブジェクト (モノ) の増加を表す用語である。この分野においては、過去18カ月にわたって極めて大きな関心が寄せられ、大きな成長が認められているが、さまざまな呼称が存在するために混乱が生じている。GEのIndustrial Internet、CiscoのInternet of Everything、IBMのSmarter Planetはそのごく数例であるが、対象範囲と重点に違いはあるものの、本質的にはすべて同じ概念を表している。つまり、さらなる効率、新たな収益構造、これまでにないビジネス機会をもたらすことが予想される、インターネットに接続されたデバイスの拡大である。ガートナーでは、「モノのインターネット (Internet of Things: IoT)」を、自身の内部状態や外部環境について伝達および認識、またはやりとりを行うためのテクノロジが組み込まれた物理的オブジェクトのネットワークとして定義している。

2014年は、一部のメディアにおいて既に「センサの年」と評されている。これは、消費者、企業、産業 (オペレーショナル・テクノロジ) の各セクタにわたる、接続されたセンサ・デバイスという概念の勢いのある発展を適切に表現している。このテクノロジが将来どのように応用されるかについて、多くはまだ明らかになっていないが、今後数年にわたって導入が見込まれるセンサの数と、これによって徐々に生じ得る価値は、相当なものになると予測されている。ガートナーの「Forecast: The Internet of Things, Worldwide 2013」は、インターネットに接続されたデバイス (PC、タブレット端末、スマートフォンを除く) の数が、2020年までにほぼ30倍となる260億台以上まで増加し、それによって実現される全世界での経済的付加価値も1.9兆ドルに上り、そのうち80%がサービスによってもたらされることを示している。


このトレンドについてさらに詳しく調査する場合は、以下に示す、ガートナーによる最近のリサーチを参照されたい。

  • 「モノのインターネットのハイプ・サイクル:2013年」(INF-14-62、2014年5月9日付)
  • 「Predicts 2014: IT and OT Convergence Results in Changed Organizations」
  • 「Uncover Value From the Internet of Things With the Four Fundamental Usage Scenarios」
  • 「The Information of Things: Why Big Data Will Drive the Value in the Internet of Things」
  • 「メインストリームに移行しつつあるモノのインターネット」(INF-13-64、2013年6月5日付)
  • 「Innovation Insight: The 'Internet of Everything' Innovation Will Transform Business」


モノづくりマシン
3Dプリンティングは、1つのテクノロジそれ自体が真の意味で破壊的なものになった稀少な例である。このような混乱は、通常は複数の相補的なテクノロジによる影響が組み合わされた結果として生じる。低コストの消費者向け3Dプリンタ (多くの場合Maker Machine:モノづくりマシンと呼ばれる) が増加しているため、実験者、起業家、新興企業は、これまでにない豊富かつ多様な機会を発見する取り組みに低コストで参入できる。同時に、産業用の市場における成長 (比較的長いが広く知られてはいない、積層造形技術の歴史に基づく) によって、新たな機会が見いだされ、新たな材料が採用されるに従い、このテクノロジがますます正当化されつつある。ガートナーは、2017年までに3Dプリンティング市場が約60億ドル規模になり、その年平均成長率 (CAGR) も80%を超えると予測している (「Market Trends: 3D Printing, Worldwide, 2013」参照)。

カスタマイズされ、従来の他の製造手段では複製が不可能な機能を有することが多い部品を製造できるという事実は、製造業における長年にわたる常識を覆す。すべての部品を2つとない方法でカスタマイズすることができ、製造コストも数量に関係なく、また従来の規模の経済が実現されない遠隔地で部品を製造することも可能になる。GEをはじめとする企業は、3Dプリンタでジェット・エンジンの組み立て用部品を製造しており、宝石商は世界に1つしかない貴金属製品を作り出しており、最先端の自動車メーカーは、製造中止から長期間が経過した車のプラスチック製部品のみならず、高性能車の部品も製造している。3Dプリンティングの新たな用途や事例の多様性は無限に広がるかのように見受けられ、医療セクタにおいては、無機材料と有機材料の両方を使用した製品の製造に対する関心の高まりによって、このトレンドは後述するヒューマン・オーグメンテーションというトレンドに大きく寄与している。

近い将来に大量生産方式が完全に消滅してしまうわけではないが、適切なモノづくりマシンを製造プロセスおよび流通ルートに組み込むことは、規模と製造能力を参入障壁として考えている既存の企業にとって極めて破壊的な動きであるのみならず、比較的小規模の企業がハンディをなくしたり、さらには自社が競争上有利になるよう仕向けたりするための幅広い新たな機会も顕在化させる。


このトレンドについてさらに詳しく調査する場合は、以下に示す、ガートナーによる最近のリサーチを参照されたい。

  • 「Predicts 2014: 3D Printing at the Inflection Point」
  • 「Strategic Technology Trends ? 3D Printing Transforms Organizations」
  • 「How 3D Printing Disrupts Business and Creates New Opportunities」
  • 「Use the Gartner Business Model Framework to Determine the Impact of 3D Printing」
  • 「Emerging Technology Analysis: 3D Printing」


ヒューマン・オーグメンテーション
デジタル・ビジネスの発展には、本来、デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にするという概念が含まれる。サイボーグのように電子機器が埋め込まれた、デジタル接続された人間という包括的な概念は、SFの世界の話であり、さらにあまりにも多くの複雑な倫理的、法的、道徳的課題をもたらすが、この将来の状態に向けた取り組みは既にかなり進んでいる。モバイル・デバイスの利用が爆発的に増加しているため、多くのユーザーは1日24時間、自分のデバイスから数十センチ圏内にとどまっている (大衆紙による報道)。このような密接な関係は単純な観察によって証明され、タブレット端末の利用のさらに急速な拡大が、24時間365日のアクセスおよび接続に対するニーズを際立たせている。2014年には既に、Google Glassなどのウェアラブル・デバイスが大きな注目を集めている。これは、デバイスやその先のクラウド・ベースの環境と人間との統合に向けたさらなる動きを表している。体内への埋め込みは医療上必要がある場合にのみ許容されると見なされているが、身体に手を加えるという考え方は多くの文化において十分確立されているため、埋め込み技術の普及は単に時間の問題である。高度な能力の実現と、衰えた身体機能の回復 (および通常の人間の限界を超えた拡張の可能性) は、関心を集め、反感を買い、今後何年もかけて取り組むべき多数の倫理上、規制上、法律上の問題点をもたらす。

それと並行して、神経刺激、生化学、およびその他の非外科的な技法による、人間の能力を強化するための (身体的に) 比較的侵襲的ではない手法に対する関心も高まりつつある。これらによって問題の一部が軽減されるが、それら自体の同様に困難な問題がもたらされる。

短期および中期的な観点では、ヒューマン・オーグメンテーションの影響はむしろ、装置としての人間 (従業員や顧客) と、すぐに利用可能なテクノロジ (ウェアラブル・デバイス、ハンドヘルド・デバイス、スマート衣料など)、そして個人が直接自由に制御できる、容易に利用可能な情報および意思決定支援機能という全体的な見方に関するものになる。Google Glassは入手困難なものでありながら、既にセキュリティおよびプライバシー関連の大きな懸念につながっており、さらには一部の場所における利用の全面禁止という事態まで発生している (これほど極端ではないが、過去のスマートフォンに対する懸念と重なる)。この点だけでも、今後このトレンドが破壊的な性質を有する可能性があることを示している。


このトレンドについてさらに詳しく調査する場合は、以下に示す、ガートナーによる最近のリサーチを参照されたい。

  • 「Innovation Insight: Neurobusiness Validates Behavioral Sciences as a Transformational Business Discipline」
  • 「Maverick Research: Living and Leading in the Brain-Aware Enterprise」
  • 「Maverick*リサーチ:人間の未来:デジタル、化学薬品、機械によって機能強化された従業員への対応を想定せよ」(INF-13-56、2013年5月31日付)
  • 「Market Trends: Enter the Wearable Electronics Market With Products for the Quantified Self」
  • 「Cool Vendors in Wearable Electronics for Health and Fitness, 2013」


ロボット工学
ロボット工学について言及すると、工場の生産現場での自動化された製造ラインや、SFの世界でのレーザーを使いこなす巨人のイメージが植え付けられる。ビジネスの現実は、それよりもはるかに広範である。組み立てラインのみならず、Kiva (現在はAmazonが所有) 製などのロボットは、効率の高い倉庫管理および物流管理における重要な要素となっている。学術機関における研究によって、人間を補助する能力が大幅に進歩している。この進歩は、数十年に及ぶ年齢構成の変化および寿命の延びに起因する差し迫った労働力不足によって促進されている。この研究分野では長年にわたり、日本の学術機関および営利団体が最先端にいたが、現在、それ以外の多くの国がこの分野における集中的な取り組みを開始している。

小売業では、顧客に助言を行うためのロボット・アシスタントが登場しつつあり、オンラインの世界における仮想アシスタントを補完している。しかし、過去数年にわたって最も重要で、大きく報道されるような進歩を見せたのは、自律輸送 (特に自動車) の分野である。Googleの自律走行車における大々的に報道された進歩 (業界の外部で報道されないことが多い、従来の自動車メーカーによる重要な進歩とは大きく異なる) は、想像力をかき立て、多くの者の恐れや懸念を封じ込めた。

軍事分野では、Boston Dynamics (Googleが最近買収した) による歩兵支援ロボットにおける進歩と無人機 (さまざまな程度の自律機能を備える) の利用増加が、共に印象的であり、かつ非常に憂慮すべき事項である。ロボット (人間に近いかどうかに関係なく) が決定する行動が人間に危害を加える可能性があるという考え方は、殺傷力を備えることも可能であるという思考によってさらに強まる。この進歩を受けて、既に戦争における武器を装備したロボットの使用の非合法化が求められているが、これによって、多くの兵器システムが既に高度に自動化されているという矛盾が浮き彫りになる。これは結局のところ「誰が引き金を引くのか」、または自動車の場合ならば「誰が事故の責任を取るのか」という問題に帰着する。

これらの問題は、求められるテクノロジの進歩ではなく、ビジネスにおけるロボット利用という課題の核心にあり、その解決には時間を要するであろう。既に、法的な説明 (恐らく、頻繁に引き合いに出されるSF作家Isaac Asimovの『ロボット工学三原則』に倣う) が (必要になるかどうかではなく) 必要になる場合に関する議論がなされている。本田技研工業のASIMOなどの有名なロボット工学の進歩の結果には何百万ドルもの値が付く (製品として入手可能な場合) であろうが、消費者向け製品 (おもちゃなどとして販売されているが、潜在的に高度な機能を有する) における近年の進歩によって、事実上、参入障壁としてのコストは消失した。映像機能を備えた無人のクワッドローターを利用すれば、300ドル未満で市民による騒乱を空から偵察することができ、また長距離飛行が可能な数千ドルしかしない自己誘導式無人機を南極海に展開して、捕鯨活動を監視することもできる。反復的な作業を実行でき容易にプログラム可能なロボットのBaxterは、わずか2万ドルで購入することができ、零細企業でも人間の労働者を置き換えるという選択が可能になる。

ロボット工学は十分に確立されており、今後10年にわたる企業への影響が広範かつ創造的であることについては疑問の余地がない。しかし、ロボットと人間の労働力の交差によって、規制当局と立法者の両方にとって、ひいては、ビジネス・リーダーにとっての課題ももたらされる。ビジネス・リーダーは、競争上の優位性を確保するためのテクノロジの採用と、事故が発生した際に起こり得る、場合によっては大きな損害をもたらす訴訟との間で板挟みになる。


このトレンドについてさらに詳しく調査する場合は、以下に示す、ガートナーによる最近のリサーチを参照されたい。

  • 「Innovation Insight: Mobile Robot Innovations Move New Business Opportunities」
  • 「Hype Cycle for Human-Computer Interaction, 2013」
  • 「Predicts 2014: Automotive Companies' Technology Leadership Will Determine the Industry's Future」
  • 「Market Trends: Advanced Driver Assistance Systems」
  • 「Hype Cycle for Emerging Technologies, 2013」
  • 「Predicts 2014: Global Logistics Differentiating the Future」


考えるマシン
学術および技術の世界において「考えるマシン」という用語を使用することは、多くの場合、論争を呼び、疑問が残るが、この用語は恐らく「コグニティブ・コンピューティング」といった技術寄りの用語や「人工知能」といった同様に含みを持つ用語よりも、その潜在力に関する一般的な理解を捉えている。どのような用語を使用するにしても、過去にロボットやオートメーションによって肉体労働者が置き換えられたように、こうしたシステムによって多くの知識労働者がプロセスから排除される恐れがある。その理由1つだけを取っても、これらは非常に破壊的であると言える。

機械学習のアプローチにおいて (Google、IBM、その他多くの比較的小規模の企業などによって) なされている重要 (かつ非常に複雑) な進歩は、継続的な学術研究とともに、この領域における急速な進歩を促進している。これらは、深い専門知識を持たない者にとっては細部にわたる正しい理解が困難となり得るが、現在と将来の両方において、こうしたシステムの能力および機能に対して非常に大きな影響を与える。

AppleのSiriや多数の仮想アシスタントをはじめとするクラウド・ベースのシステムは、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」で勝利を収めたIBMのWatsonのようには大きく報道されていないが、同様の課題をもたらす。こうしたシステムは、(そもそも質問を理解することはもちろん) 質問に対する最適な答えを求める際に膨大な情報を評価して、客観的で偏りや先入観のない提案を行うことができる。ここで、その結果が求めている答えであるかどうかが論点になる。Siriのようなシステムの場合、ユーザーが答え (恐らく「一番近いインド料理店はどこか」といった単純な質問に対する答え) を要求しても、提示される結果は1件のみかもしれない。この場合、「なぜその答えなのか」という論点を巧みに避けており、確認できないアルゴリズムや考慮された影響に関して疑問が残る。同様に、Watsonのような強力な意思決定支援エンジンによって、がん患者に対して推奨される診断および処置が提示された場合、その答えを伝える役目は医師になるであろう。医師には責任が伴うため、集積された情報に基づくそのような網羅的な要約に同意しなくともよいであろうか。

ロボット工学と同様に、ビジネスにおける考えるマシンの広範な導入の障害となるのは、法律上、倫理上、規制上の課題であるが、競争上の優位性を求める上で、これを実行する意欲は強力であろう。


このトレンドについてさらに詳しく調査する場合は、以下に示す、ガートナーによる最近のリサーチを参照されたい。

  • 「Artificial Intelligence Finally Delivers Real Value for Business Applications」
  • 「CIO Advisory: Why CIOs Should Be Concerned About Siri and Other Voice-Controlled Assistants」
  • 「Smart Machines Lead to Competitive Advantage as Well as Ethical Challenges」
  • 「Smart Machines Mean Big Impacts: Benefits, Risks and Massive Disruption」
  • 「Google, Apple Siri and IBM Watson: The Future of Natural-Language Question Answering in Your Enterprise」
  • 「IBM Bets on New Watson Unit to Ignite Smart Machine Era Growth」


SMARTテクノロジを結び付ける共通の脅威
これらのトレンドの異なる性質は誤解を招きがちである。なぜなら、これらにはあらゆる業界に属する企業にとっての重要性および関連性を少なからず強める、以下に示す多くの共通の特徴があるためである。

  • 各トレンドは、ガートナーのハイプ・サイクルにおける初期の段階にあり、多くの企業において安定期および主流の採用に達するまでに5〜15年 (またはさらに長期間) かかる可能性がある。
  • こうしたテクノロジについてはそれぞれ、初期の実例が市販されており、未来のテクノロジのように思えるかもしれない。こうした初期の実例は、数年間は洗練されておらず不十分に見えるが、これらを使えば、現時点で手頃な価格ですべての企業が実際に体験することができる。
  • 驚くべきことに、このような明らかに高度なテクノロジである割には、将来の進歩を止めるような技術上の重大な障害が存在しないように見受けられる。
  • 個々のテクノロジはそれぞれ、個別の企業、業界、そして恐らく社会に著しい混乱、断絶さえもたらす潜在力を有している。こうしたトレンドの間でかなりの水準の一致が見られることから、この影響は大幅に強まる可能性がある。
  • 各トレンドは、データの生成側 (センサ・ネットワークやヒューマン・オーグメンテーションの場合) または情報の利用側 (ロボット工学や考えるマシン) として、データ、情報、さらには意思決定との密接な関係を有する。
  • 各テクノロジの継続的な発展および進歩によって、新たな分野が開拓され、規制、法律、倫理の各領域における現状が問い直される。これらの領域 (特に倫理および道徳の問題) は、他者が心配すべき問題であるとしてテクノロジ・リーダーによって軽視されることが多い。しかし今こそ、ビジネス・リーダーがこのような問題について、情報に基づき真剣に議論すべき時である。倫理上および法律上の困難な議論はまだ始まっていないが、テクノロジに関するこのパンドラの箱がいったん開かれると、再び閉じられる可能性は極めて低いことが歴史によって証明されている。社会、ビジネス・リーダー、政治家、立法者が一体となって、導入の範囲および性質と、将来の悪用の規制に必要な抑制と均衡について、公正な妥協点を見いださなければならない。

全体を把握すれば、これらの共通要素は、今後10年間における主要な破壊的要因、およびすべての企業のCIOやビジネス・リーダーが調査、評価、行動する価値のある対象としてこうしたテクノロジ・トレンドを選択する上での根拠となる。



SMARTテクノロジとデジタル・ビジネス
力の結節 (クラウド、インフォメーション、ソーシャル、モバイル) による影響がさらに広がり、ビジネス環境に浸透するに伴って、先進企業は、既に将来を見据え、次の大きなトレンドを特定し、さらなる競争上の優位性を模索している。われわれは現在、デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にすることでさらなるデータを生成し新たな価値を創造する、進歩しつつあるセンサの利用とモノのインターネットの発展という特徴を持つ、新たなデジタル産業経済への転換期にいる。ガートナーは、この来るべき時代を「デジタル・ビジネス」と表現している (「Lead in the Digital Industrial Economy Using Insights From Symposium's Analyst Keynote」参照)。

インターネットに接続されたデバイスおよびセンサの数が増すにつれて、新たなデータの量も増加し、新たな意味で破壊的な力がビジネスにもたらされる。デバイス (モノ) が意思決定プロセスにおいて重要な役割を果たすようになり、取引における重要な主体またはインフルエンサーになる。多くの場合、スマート・デバイスの拡大によって、新たなカテゴリのマシン間取引が確立されるであろう。SMARTテクノロジは、ビジネスにおける次の進化に固有の要素である。そして、末端のデバイスから成る新たな世界を作り出し (センサ・ネットワーク)、人間をデジタルの世界に次第に統合し (ヒューマン・オーグメンテーション)、これまで対応能力を超えると考えられていた多くの作業を含む、増えつつあるさまざまな作業を実行するマシンやシステムを実現し (ロボット工学)、そして最後に、まさにそれらのシステムで複雑な問題を解決し、特別なプログラミングなしで効果的に意思決定を行うことを可能にする (考えるマシン)。

デジタル・ビジネスは成熟度の異なる多数のテクノロジに依存するが、ガートナーでは、本リサーチノートで紹介したSMARTテクノロジが、極めて重要な役割を果たし、デジタル・ビジネスという新たな潮流において見込まれる新たな収益の機会を十分に利用したいと考える先進企業にとっての強力な基盤を形成すると考えている。



SMARTテクノロジによる影響を理解する
こうしたトレンドはどの1つをとっても、それ自体が既存の企業に著しい混乱をもたらすと同時に、その他の企業にとっての新たな機会を作り出す可能性がある (また実際にそうなることがほぼ確実である)。しかし、これらは他と切り離されたトレンドではなく、一体となって貢献し、各業界全体を混乱させ、場合によっては社会構造の変化にもつながるさらに影響力の強い結果をもたらす。以下にその例を示す。

  • 消費者向けスマート・デバイス (インテリジェントな煙探知器 [ http://www.nest.com ] など) は、購入者にとってのより高度な顧客利便性のみならず、製造元のベンダーにとっての収益構造 (従来のサーモスタットよりも利益率がはるかに高い) も提供する。そして、インターネットに接続されたセンサとして、さまざまな接続サービス (警報検知および救急サービスの通知など) の需要 (機会) を創出し、そのすべてがサービス・プロバイダーにとっての新たな機会となる。1つのサービスが確立されたら、家庭内にあるその他のスマート・デバイスを結び付けて、それによって収益の機会を拡大するという選択肢も用意されている。
  • 3Dプリンティングは、明らかに製造業に破壊的な影響を及ぼすが、その他の多くの分野にも二次的な影響を与える。製品を遠く離れた場所でプリント可能な場合、物流管理および倉庫管理に対する需要が変化し、関連会社の収益力が低下する。在庫切れによる販売機会損失の減少、部品をカスタマイズする能力、コスト効率に優れた方法でバッチ・サイズを減らす能力は、大きなメリットである。しかし、知的財産の保護が迫られており、製造される場所の移動によって消費税の税収が影響を受ける可能性がある。

これら2つのテクノロジを組み合わせた場合、以下のシナリオを容易に想像できる。つまり、デバイスが、(そのデバイスがモニタしている他の何らかのシステムの) 故障が差し迫っていることを検知して、その情報を中央のシステム (考えるマシンが複数のパラメータに基づいてルール・ベースの意思決定を行う) に伝達し、今度はこのシステムが、地域の配達拠点に3Dプリンティングで交換部品を作成するよう指示を出した後、その部品が利用できることをユーザーに伝えて、故障の可能性がある部品を事前に交換するためにサービス・エンジニアが電話する日時を取り決める。こうしたインテリジェントなデバイス (上述のデジタル・ビジネスにおける「モノ」) の役割の増大は、多くの活動における人間の関与に非常に大きな影響を与え、責任および規制関連の重要な課題をもたらす。例えば、製造業で導入されるロボットの増加 (『1 Million Robots to Replace 1 Million Human Jobs at Foxconn? First Robots Have Arrived』 http://singularityhub.com/2012/11/12/1-million-robots-to-replace-1-million-human-jobs-at-foxconn-first-robots-have-arrived/ 参照) は、部品の3Dプリンティングと相まって、所要労働力における大きな変化を意味する。このことは、失業率の増加と所得税の減収が原因となって、政府の政策にも影響を与える。同様に、考えるマシンによって事務職員および下位/中位層の知的労働者が不要になった場合 (または少なくとも減少した場合)、オフィス空間に対する需要が減少し、商業用不動産市場およびオフィス空間の貸し手に大きな影響を与える。

こうしたテクノロジの進歩は、広い範囲に大きな影響を与え、時としてそのスピードが著しく速いため、ITリーダーは早急に、潜在的な影響 (および機会) を理解できるよう同僚を支援し、著しく不利な立場に陥らないように断固として行動しなければならない。



CIOおよびビジネス・リーダー向けの推奨事項
本リサーチノートで紹介したSMARTテクノロジは、検討した後にイノベーション担当グループやテクノロジ・シンク・タンクに渡すような単なる将来のトレンドの興味深いリストではない。過去6カ月にわたって、こうしたトレンドをさまざまな業界や地域のビジネス・リーダーやITリーダーに説明した経験から、すべての企業において、少なくとも2つ、通常は3つが、一般に、(肯定的な意味と否定的な意味の両方において) 極めて破壊的な影響を及ぼすと予想されることが明確に実証された。したがって、ガートナーでは、すべてのCIOが今後3カ月以内に以下の行動を起こすことを強く推奨する。

  • テクノロジの本格的な検討と、自社および自社が属する業種の両方を対象とする、各テクノロジによってもたらされる潜在的な脅威や機会に関する評価を促すために、本リサーチノートおよび関連する参考資料の情報を利用する。総合的な視点を得るために、マーケティング、製品開発、製造などの他のビジネス部門から意見を取り入れる機会を利用する。
  • (緊急性やもたらされる混乱の度合いの観点から) 最も影響の大きいトレンドについて独自の最終候補リストを確定するために、トレンドの優先順位を決定する。影響が小さいか緊急性が低いとして、こうしたトレンドのうち2つ以上を無視できるように思われる場合は、極めて懐疑的に考える。
  • さらなる調査と、目前の「簡単に成果の得られる機会」特定に限定せず、長期的なリスクおよび利益のポートフォリオを特定する目的でパイロット・プロジェクトを開始するために、追加の資金援助を求める。
  • 自社のビジネス戦略およびデジタル戦略担当者と連携して、既存の計画および戦略を再検討し、こうしたテクノロジ・トレンドによって前提が変化するか、これまで予期していなかったリスクや脅威がもたらされるか、新しい補完的な収益の機会が得られるかを確認する。
  • 果敢に行動する。デジタル・ビジネスという迫り来る波によって、新たなデジタル産業経済の明確化と、それに対する断固とした対応の両方を行わない多くの企業は、すぐに退場を余儀なくされる。本リサーチノートで紹介したSMARTテクノロジは、デジタル・ビジネスを支え、また実現するデジタル化プラットフォームの主要な構成要素である。これらのテクノロジのうち2つ以上を確実に採用し、それらを業務運営全体に組み込まない企業は、積極性に優れた企業によってもたらされる競争上の脅威を切り抜けることができる見込みがなく、今後10年にわたって市場での地位を徐々に失っていくことになる。


推奨リサーチ

  • 「Predicts 2014: The Business Impact of the 'SMART' Technologies」
  • 「The Disruptive Era of Smart Machines Is Upon Us」
  • 「Maverick* Research: Ethics Are at the Center of the Nexus of Forces」
  • 「Maverick* Research: Surviving the Rise of 'Smart Machines,' the Loss of 'Dream Jobs' and '90% Unemployment'」
  • 「Agenda Overview for Business Innovations and Emerging Trends, 2014」


根拠

本リサーチノートは、ガートナーが何年もかけて実施した新たなトレンドの広範な将来予測と、ガートナーのアナリストや該当分野の専門家による詳細な洞察および分析に基づいている。過去6カ月にわたってその意義をさらに確認するために、こうしたトレンドを多くの上級ITリーダーおよびビジネス・リーダーに紹介し、その重要性および影響を詳細に議論した。



(監訳:松原 榮一)
ITM: ITM-14-09


※本レポートの無断転載を禁じます。

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