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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

データ・サイエンティストの典型的な配置方法:その利点と欠点

アプリケーション (APP) /APP-13-163
Research Note
A. Linden, G. Herschel, N. Chandler
掲載日:2014年4月30日/発行日:2013年11月5日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年5月22日(木)・23日(金)に開催する 「ガートナー ビジネス・インテリジェンス & 情報活用 サミット 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


ビッグ・データが強力に推進されているため、多くの組織には新しい高度なアナリティクス・チームまたはデータ・サイエンス・チームを設立する必要が生じている。本リサーチノートでは、データ・サイエンティストを配置するための最も一般的な組織構成の利点と欠点について説明する。

要約

主要な所見

  • 高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームは、成功するためにビジネス・ニーズを深く理解しなければならない。
  • 高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームには、コア・スキルセットのほかに、データやプロセス、オペレーショナル・テクノロジ (OT) を確実に理解することが求められる。
  • 従来の組織構成の多くでは、知識の共有が欠如しており、経営陣の関与を得ることができず、部門横断的なプロジェクトの着手および実施ができない。

推奨事項

  • 高度なアナリティクスまたはデータ・サイエンスに関する役職を新たに設けることになった場合、既に組織内にいる専門家は、現在の役職に留任させる。そうすることによってのみ、彼らはこれまでに培ってきたビジネス上の信頼関係と成功経験を維持することができる。その代わりに、IT部門および事業部門 (LOB) の外に高度なアナリティクス/データ・サイエンスに関する組織を別途設置することで、高度なアナリティクスに迅速に着手し、要件の充足を推進することができる。この組織は、最初のうちは、新興テクノロジ・グループに近い組織か、または革新/戦略グループの範囲内に配置するとよい。
  • 異なるアプローチの調整、ベスト・プラクティスの共有、経営陣の関与の確保、部門横断的なアナリティクス・プロジェクトの着手および管理は、組織の風土と洗練度に応じて、さまざまな組織構成により実現できる。すべての組織に適用できるベスト・プラクティスは存在しない。

目次

 はじめに

 分析

 推奨リサーチ

図目次
 図1 A:事業部門内に高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティストを保有
 図2 B:IT部門内に高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティストを保有
 図3 C:高度なアナリティクス/データ・サイエンスに関する独立した組織
 図4 D:事業部門およびIT部門の双方で、高度なアナリティクスの専門家/
      データ・サイエンティストを保有
 図5 E:高度なアナリティクス/データ・サイエンティストの専門家を社内全体に分散配置



はじめに
データから価値を抽出する作業は簡単ではない。「データから意味を見いだす」プログラムに不可欠な要素の1つは、適切なスキルを有する人材である (「Emerging Role of the Data Scientist and the Art of Data Science」参照)。これは、組織のあらゆる場所で、レポートやスプレッドシートを分析し、その他の種類のデータ・ストリームを処理している従来のビジネス・アナリストのことではない。適切なスキルを有する人材とは、明確で強力なビジネス上の恩恵を得るために、データから数学的モデルを導き出す、まれな能力を持った専門家である。

最近では、このような人材はデータ・サイエンティストと呼ばれている。少し前まではデータマイナーと呼ばれていたが、ウォール街では現在でも「クオンツ (計量アナリスト)」などと呼ばれている。本リサーチノートでは、こうした専門家を、同じ意味でデータ・サイエンティストまたは高度なアナリティクスの専門家と呼ぶ。

名称にかかわらず、重要なことは、こうした人材を組織のどこに配置するかである。彼らは、異なる事業部門間をうまく連携させ、ビジネスの目標、制約、プロセス、利用可能なデータ、分析の可能性が交差する環境で業務を遂行する必要がある。



分析
ガートナーでは、データ・サイエンティストの配置のし方として、以下の5つのモデルが特に普及しているとみている。

  • A:事業部門内
  • B:IT部門内
  • C:独立した組織
  • D:一部の事業部門およびIT部門内
  • E:IT部門およびさまざまな事業部門とやりとりする仮想的/物理的な個別のイニシアティブまたは部門


図1 A:事業部門内に高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティストを保有

AA/DS= 高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティスト
出典:ガートナー (2013年8月)


最も一般的な組織構成において、データ・サイエンティストは、定量分析から大きな恩恵を受ける各事業部内に配置される。過去を振り返ってみると、専門チームが初期に結成された業界の1つは、生産の最適化ならびに条件に基づくモニタリング、自動化に関する分析モデルの構築を必要とする製造業であった。また、保険業は、保険計理部門でこの概念を早期に採用している。これは、保険業のコア・コンピテンシの1つがリスクを定量的に評価する能力であるからである。このほかに、専門の定量分析部門を設立している業界には、金融業 (リスク・モニタリング) や旅行業および物流業 (資源の最適化) などがある。

次の波は、1980年代のダイレクト・マーケティングであった。この頃から、B2C業界(個人消費者向けビジネス、ここでは特に小売、通信、金融、保険) の営業部門とマーケティング部門の間で、ダイレクト・メールを送る対象を微調整する手段としてアナリティクスのパワーが注目されるようになった。近年では、顧客/センチメント分析に対して、より高度なアプローチが採用され始め、それと同時にマーケティング部門内で高度なアナリティクスに対する需要が再び高まった。例えば、ガートナーは、最高マーケティング責任者 (CMO) が高度なアナリティクスの主要な後援者となっているケースをたびたび目にしてきた。また、マーケティング・サイエンティストを採用、または育成している企業が増加している。

  • 利点:ビジネスの意思決定者の近くに置くことにより、ビジネスを深く理解している意思決定者に、通常は簡単に取得できないデータ・サイエンス・スキルが提供される。
  • 欠点:一般に、知識共有のレベルが不十分である。事業部内のデータ・サイエンティストには、OTおよびデータ・リネージ (系統管理) に関する確実な理解が欠けていることが多い。また、このような組織構成では、通常は最善策とは考えられていないパッケージ化されたアプリケーションとソリューション・プロバイダーが、比較的好まれる。さらに、部門横断的なプロジェクトを開始および実行する能力は、多少制限される。そのため、こうしたシナリオでは、要件主導のアナリティクス戦略がより好まれ、アナリティクスに対するボトムアップ型、コンテキストに基づくデータ主導のアプローチから生じる多くの機会が活用されないままになる。
  • 推奨事項:単一の職務分野内で非常に専門的な需要がある、あるいは分散化を強力に推し進める場合は、高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティストを事業部内に配置する。そうではない場合でも、既に大きな成功を収め、ビジネス上の信頼関係ができている場合は、当該事案に密接に関係するデータ・サイエンティストを事業部内に保有し続ける。


図2 B:IT部門内に高度なアナリティクスの専門家/データ・サイエンティストを保有

出典:ガートナー (2013年8月)


1990年代半ばの機械学習とコンピュータ・パワーの進歩がきっかけとなって、データベース・グループまたはデータハウジング・グループと共に、多くのチーム (この時点ではデータマイニング・チームと呼ばれていた) がIT部門内に設立された。このことは、比較的大規模なデータ集約型組織では、非常に自然な選択であるように思われた。このような組織において、高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームは、さまざまな事業部に対してタイムシェアリングされる資源となった。最近では、中央集権的なビジネス・インテリジェンス (BI) 機能の出現により、ITリード・チームが貢献できる役割が見事に実証された。その結果、一部の組織では、アナリティクスを既存の能力の拡張、あるいは少なくとも中央で共有され、各種ロジックを検証するサービスを提供するものと見なすようになった。

  • 利点:このモデルでは、高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームを多様な事業部に対してタイムシェアリング対象の資源とすることが、主な強みとなる。データ・ストアとトランザクション・システムに近いことにも、大きな利点がある。また、実験的な形式のデータ主導アナリティクス、リアルタイム・アナリティクス、インメモリ・アナリティクスに対する資金を調達できる場合、こうしたチームを「データ・サイエンス・ラボ」に発展させることができる。(IT部門によって管理される) 高度な自動化システムを通じて分析機能が組織内に再配備される場合、アナリスト・チームとIT部門が近くにいることで、より適切に分析機能を配備することもできる。
  • 欠点:データとプロセスに近いということは、ビジネス部門の成果物の「利用者」からは遠いというこのモデルの最大の欠点を示唆している。この状況において、高度なアナリティクス専門家は、高度なアナリティクス・プラットフォームを好むことが多い (根拠1参照)。
  • 推奨事項:異なる事業部にわたって高度なアナリティクス/データ・サイエンスへの幅広い需要があり、また既にITデリバリ指向の能力が確立されている場合、または集中化を強力に推し進めている場合は、高度なアナリティクス/データ・サイエンスの能力を有する人材をIT部門内に配置する。


図3 C:高度なアナリティクス/データ・サイエンスに関する独立した組織

出典:ガートナー (2013年8月)


組織の中には、高度なアナリティクス/データ・サイエンス資源を、IT部門と事業部門の両方の職務から切り離して、個別の「データ・サイエンス」または「高度なアナリティクス」グループに物理的に集結させているところもある。こうした部門は、「ビジネス・アナリティクス」「顧客アナリティクス」「データ・サイエンス」「顧客インサイト」「データ・インサイト」と呼ばれることもある。また、このような部門のトップは、最高戦略責任者、最高運用責任者、最高データ責任者、CFOのいずれかの直属である。このモデルは、「従来型」の多くの企業ではまだ珍しいが、比較的小規模で、革新的なデータ集約型の企業による採用が増加している。

  • 利点:このモデルは、上級経営陣の関与を確保するために非常に役立つことが多く、組織全体で分析の再利用、知識共有、啓発が促進される。このモデルでは、ベンダーとツール/ソリューションの好みに関して、バランスの取れた見解が生じる可能性が最も高い。
  • 欠点:受益者となる事業部門が複数あると、プロジェクトの優先順位に関する期待が複数存在するため、何らかの組織ガバナンスが別途必要になる。また、3つのタイプの社内ステークホルダー (事業部門、高度なアナリティクス/データ・サイエンス部門、IT部門) が存在するため、摩擦が大きくなる可能性がある。
  • 推奨事項:革新に対する強力なニーズがあり、既存の組織体制にそのニーズを容易に受け入れる手段がほかにない場合は、高度なアナリティクス/データ・サイエンスの能力を有する人材を、事業部門やIT部門から独立した組織に配置する。この方法は、集中化されているが俊敏な組織にとっては非常に有効である。


図4 D:事業部門およびIT部門の双方で、高度なアナリティクスの専門家/
     データ・サイエンティストを保有



出典:ガートナー (2013年8月)


大企業の多くは、高度なアナリティクス・チームを、配置の必要性がある事業部門内 (マーケティング、生産、物流、リスク) に部内組織として配置している。また、複雑なアナリティクスのニーズがある事業部門については、IT部門内にも高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームを設置している。こうした状況は必然性の下に形成されてきたものの、このモデルには独特な欠点も存在する。このモデルは、特化型組織の構成からあらゆる利点を引き継ぎ、大規模な組織では非常によく見られる構成になったが、欠点も同時に引き継いでいる。

  • 利点:IT部門内の組織が、デリバリ主導のサービス (データや分析結果の提供) のために利用され、IT部門のトップ (CIO) がデータ利活用に関する調査に独立した予算を確保しているのであれば、このモデルは良好な結果を生むことができる。また、このモデルは、事業部門内のアナリティクス・チームがより戦術的で周期の短い分析をサポートする一方で、中央 (IT部門内) アナリティクス・チームが長期にわたって有効なことが多い戦略的な企業全体の分析に責任を負う場合にも、非常に有効である。
  • 欠点:高度なアナリティクス専門家/データ・サイエンティストは、事業部門が独自に進める多くのプロジェクトで疎外感を感じることが多い。これにより、乗り越えることが非常に困難なさらなる壁が生じる。さまざまな要件があるため、アナリティクス・チームは、非常に異なるツールとアプリケーションで作業を行うことが多く、チーム間でインサイトを共有することが困難になる。したがって、知識を共有するためには、このようなギャップを埋める方法を見つける個人の能力が不可欠である。
  • 推奨事項:このモデルは、高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームが、独立した予算を十分に確保し、部門横断的に業務を遂行できる場合に、高い効果を発揮する。また、このモデルはIT部門の影響を払拭することが難しい。IT部門と高度なアナリティクス/データ・サイエンス部門が必要とするスキルセットは根本的に異なるため、できれば両方の職務を分けることを推奨する (次の項を参照)。


図5 E:高度なアナリティクス/データ・サイエンティストの専門家を社内全体に分散配置



出典:ガートナー (2013年8月)


ガートナーの比較的大規模な企業顧客の多くにとって、今後も複雑な状況は変わらないと予想される。考えられる理想的なシナリオの1つとして、独立した高度なアナリティクス/データ・サイエンス部門で、取締役会レベルの認知度と独立した資金を確保できれば、アナリティクスの変革的な利用が可能になる。このような部門は、成功と失敗に対して説明責任を負う者が率いる必要がある。最近では、こうした部門を「データ・サイエンス・ラボ」と呼ぶ組織もある。同時に、高度なアナリティクス/データ・サイエンスの専門家は、今後も社内全体に分散して配置されることになるであろう。慣れ親しんだ業務領域からこうした専門家を引き抜くことは推奨できない。結果として、彼らが元のグループとの間に育んだ親密な関係性を失ってしまう恐れがあるからである。

このような独立した部門と、古典的なBIプログラムまたはBIコンピテンシ・センター (BICC) を一緒にすることは、慎重に検討しなければならない (「Business Intelligence Competency Center Key Initiative Overview」参照)。既存のBICCには、たいてい、従来型のBIツールが配備されている。また、一般に、高度なアナリティクス/データ・サイエンスの専門家で構成される比較的小規模なチームの場合、その組織風土と目標 (部門横断的な目標、発見、革新) は、大規模なBIまたはBICCチームのそれとは (一貫性と信頼性に関して) 根本的に大きく異なる。したがって、こうした異なるチームを一緒にすれば、双方に不満が生じるだけである。データの相互によるアクセスと再利用は利点であるが、わざわざ一緒にする必要性はない (特に、データの利用方法、および新しいデータ・ソースによる実験と比較した既存のデータの組み合わせがグループ間で著しく異なっていることが、その理由である)。

しかし、BIプログラムが十分に確立された後に、これらの部門が力を合わせることには意味がある。一体化されたBIプログラムのみが、大企業のさまざまな分析ニーズに対してシームレスな回答を提供できる。

  • 利点:ここまで、中央管理部門を設立する利点については、BICCに関連して既に十分に説明した (「Business Intelligence Competency Center Key Initiative Overview」参照)。以下の理由から、同じ利点がデータ・サイエンス・ラボにも当てはまる。
    • より優れた知識の共有を容易にする。
    • 部門横断的な方法で、企業のビッグ・データ・イニシアティブを啓発し、促進し、主導する。
    • 社内外のトップ・エキスパートの協力を得る。
    • ツール/ソリューションの好みに関してバランスの取れた見解を提供する。
    • アナリティクス・ベンダー、ツール、サービスを何度も評価することを回避し、アナリティクスのツールとサービスのより有利な価格を得る。
  • 欠点:上述したように、このようなデータ・サイエンス・ラボは、多様なステークホルダーにサービスを提供することから、混乱または不和の原因となることがある。データ・サイエンス・ラボはまだ十分に確立された手法ではなく、潜在的な問題の特定と教訓が得られるまでには時間がかかる。最も重要な点として、ガートナーは、上層部の積極的な関与、真の説明責任、まとまった額の資金拠出を伴う場合にのみ、このアプローチが機能すると考えている。
  • 推奨事項:純粋に仮想ベースで、独立した高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームを設立することには慎重を期す。高度なアナリティクス・コンピテンシ・センターの役割と、組織全体にわたるその他の高度なアナリティクス/データ・サイエンス・チームとの関係に関して、必ず明確な合意を得るようにする。また、組織内のアナリティクスの発展を反映するために、この合意は必ず定期的に更新する。BIプログラムがない、またはBICCを持たずBI成熟度の初期レベルにある組織では、高度なアナリティクス/データ・サイエンティストの職務を正式に配置することが必ずしも最善ではないということに注意する。BIプログラムの基本的なコア要素が実装できていない組織は、高度なアナリティクス/データ・サイエンティストの職務の集中化および効率化を試みるときに、課題に直面するであろう。


推奨リサーチ
・「Emerging Role of the Data Scientist and the Art of Data Science」
・「Business Intelligence Competency Center Key Initiative Overview」

根拠
1. ガートナーでは、高度なアナリティクス・プラットフォームを「1つまたは一連のソフトウェア・アプリケーション」と定義している。このプラットフォームを利用することで、スキルのあるユーザーは、単独またはチーム・ベースで、データのインポート、モデリング (予測、分類、クラスタ化、親和性分析、シミュレーション、最適化など)、およびモデルの配備などのアクティビティを実行できる。これには、特定の業務領域向けにパッケージ化されたアナリティクス・アプリケーションは含まれない。



(監訳:堀内 秀明)
APP-13-163


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