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2013年の展望:日本におけるITマネジメント

ITマネジメント (ITM) /ITM-13-23
Research Note
E. Matsubara, S. Yamanoi
掲載日:2013年9月17日/発行日:2013年6月25日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2013年10月15日(火)〜17日(木)に開催する 「Gartner Symposium/ITxpo 2013」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)

 

本リサーチノートでは、日本におけるITマネジメントの領域において、2013年以降に起こり得る状況を展望する。

要約

主要な所見

    ● 企業のIT部門は、ITを適切に活用してユーザー部門のビジネス・プロセス変革の効果を上げることを期待され、さらにはネット・ビジネスに代表されるようなITによって成立するビジネスモデルの提案を求められるようになってきている。

    ● 日本企業のITグループ会社の保有率は、従業員1,000名以上の企業では40%程度であるが、この数字は、この5年間では横ばいである。

    ● ソフトウェア・ベンダーからのライセンス監査の申し入れは、2011年に引き続き2012年にも行われた。


推奨事項

    ● ユーザー部門のビジネス・プロセス変革の一翼を担おうとしているIT部門は、経営層からの明示的な支持の獲得と、ユーザー部門との協働作業の仕組みを構築する。

    ● 自社においてITグループ会社を保有する目的が継続的に満足されるためには、自社のクラウド利用の方針や、自社とITグループ会社の人件費比較を中心に毎年見直しを行い、変更に時間のかかるITグループ会社の設立や要員の採用に当たっては、通常のIT戦略計画のレンジ (3年程度) を超えた視点を持つ。

    ● ソフトウェア資産管理 (SAM) は、年に1回の棚卸しのみで対応するのではなく、ユーザー部門からの資産の調達依頼に始まり、ハードウェアの廃棄、ソフトウェアの利用終了に至るまでの変化・推移をプロセスに組み込んで実施する。


目次

    戦略的プランニングの仮説事項

    分析
     要旨
     戦略的プランニングの仮説事項
      IT部門のビジネス・プロセス変革における役割
      ITグループ会社の将来
      IT資産管理

戦略的プランニングの仮説事項

    ● 社内のビジネス・プロセス改革を経営層から期待されているIT部門は、2013年には80%を超えているが、部門の位置付けや要員の問題により、この期待に応えられるIT部門は、2015年まででも50%程度にとどまる。

    ● 従業員1,000人以上の企業で、ITグループ会社を保有している企業の割合は、2012年には40%程度であるが、2015年においてもこの数字に大きな変化は起きない。

    ● 2013年において、SAMを実施している企業の90%は、ライセンス取得契約との突き合わせが不完全である。そのため、2015年まで、ベンダーのライセンス監査に耐えられないリスクが存在する。

分析

本リサーチノートは、日本企業のIT部門がITマネジメント領域で注意すべき、IT部門の役割の変化、ITグループ会社の動向、IT資産管理について取り上げている。

要旨
日本企業のIT部門は、これまでの高品質なシステム・サービスを構築して提供するだけの役割から、ビジネス・プロセスの改革を担う役割も期待されるようになっている。これを、システム・サービスの品質を維持しながら行わなければならないので、IT部門の足腰となるITグループ会社をしっかりした体制にすることが重要になる。また、サービス品質の最低条件であるコンプライアンスの点からは、ソフトウェア・ライセンス管理に継続して注目する必要がある。


戦略的プランニングの仮説事項

IT部門のビジネス・プロセス変革における役割

社内のビジネス・プロセス改革を経営層から期待されているIT部門は、2013年には80%を超えているが、部門の位置付けや要員の問題により、この期待に応えられるIT部門は、2015年まででも50%程度にとどまる

分析:松原 榮一


主要な所見:
企業のIT部門に期待される役割は、システムの開発や運用を高品質かつ低コストで提供することから、ITを適切に活用してユーザー部門のビジネス・プロセス変革の効果を上げることや、さらにはネット・ビジネスに代表されるようなITによって成立するビジネスモデルの提案を求められるものになってきている。

しかし、日本情報システム・ユーザー協会 (JUAS) の『企業IT動向調査2013』によると、ビジネス・プロセス変革について、経営層の期待に応えられている企業は、7.3%にとどまっている。これは、ビジネス・プロセス変革ですら、IT部門の業務の一部とすることに関してトップからの明確な指示や全社的なコンセンサスを欠く場合が多く、結果として、経営層は期待しているものの、その期待に応えられていないIT部門が多いことを示している。これにより、本来ビジネス・プロセス変革に必要な要員の獲得すらできず、なおさら期待に応えることができなくなる、といった負のスパイラルに陥っている可能性が高い。

また、ITがどのようにユーザー部門でのビジネス・プロセス変革に貢献したかを経営層に理解させるためには、ITプロジェクトによって実現できたビジネス変革について、適切な事後評価を行い、経営層に対して報告する仕組みが必要である。したがって、適切な事後評価の仕組みが構築されていないと、IT部門がビジネス変革の一翼を担ったとしても、その貢献が経営層に理解されない。しかし、事後評価が常に実施されているのは、売上高1兆円の企業でも33.3%、1,000億〜1兆円の企業では13.69%であり (備考1参照)、実施されていない企業においては、効果が見えないために投資が絞られる、といった負のスパイラルに陥る可能性が高い。

市場への影響:
あらゆるビジネス・プロセスにITが組み込まれている企業の現状を考えると、ビジネス・プロセス変革が行われなければ、IT投資も増えなくなる。今後、IT部門がビジネス・プロセス変革の一翼を担い、経営層にITの効果を理解させることができる企業と、そうでない企業とでは、ITに対する投資の伸び率が大きく異なってくる。

推奨事項:
ユーザー部門のビジネス・プロセス変革の一翼を担おうと考えるIT部門は、経営層からの明示的な支持の獲得と、ユーザー部門との協働作業の仕組みを構築する。その上で、ITプロジェクトについての事後評価の仕組みを確立すると同時に、実際にビジネス・プロセス変革に従事する要員の確保・育成を図っておく。要員の育成においては、ユーザー部門との人事ローテーションなどにより、ユーザー業務の体感を持たせることを重視する。
ITグループ会社の将来

従業員1,000人以上の企業で、ITグループ会社を保有している割合は、2012年には40%程度であるが、2015年においてもこの数字に大きな変化は起きない

分析:松原 榮一

主要な所見:
JUASの『企業IT動向調査2013』によると、従業員1,000人以上の企業で、ITグループ会社を保有している企業の割合は、2012年には40%程度である。また、ここ5年間の動きとしては、年により多少の上下はあるものの、ほとんど横ばいの動きを示している。

一方、ガートナーのシンポジウムで実施したITグループ会社施策についてのワークショップ参加者からのフィードバックによると、ITグループ会社を保有する目的は、大半の企業において、自社の業務知識を持っている要員の確保、およびコストの削減となっている。そして、外販の拡大などの目的を挙げた参加者は1割以下の数字にとどまっている。したがって、ITグループ会社の保有は、要員の確保とコストの削減といった促進要因と、ITグループ会社設立に掛かる費用や業務プロセスが2つの会社にまたがることによる分割損といった阻害要因とのバランスで決まると考えられる。

また、親会社の企業規模とITグループ会社の保有率の間には密接な相関があり、企業規模が大きくなるほど保有率も高くなっている。これは、従業員数1,000人の企業では、自社と外部の要員を合わせても30人程度 (経済産業省の『平成23年情報処理実態調査』では、従業員総数に対して社内の雇用者が1.9%、外部の要員が1.1%となっている) なので、ITグループ会社を設立したとしても多くても20人程度の規模になってしまい、会社組織としての規模になり難いことが、規模の小さい企業でのITグループ会社保有を制約していると考えられる。

一方、従業員数が1万人を超える企業グループでも、ITグループ会社を保有していない企業が存在する。これは、自社の要員で外部仕様作成までの作業を実施できる要員が確保できている、または、社員の人件費コストが相対的に低く、IT業界と比べて差が小さいため人件費コストの削減のメリットが低い場合であると考えられる。

市場への影響:
ITグループ会社設立の目的が、自社の業務知識を持っている要員の確保とコストの削減であれば、現在の親会社の雇用制度・処遇体系が大きく変わらない限り、ITグループ会社を新たに設立したり、ITグループ会社を親会社に統合したりする動きは起き難いと考えられる。一方で、10年といった長期的な視点からは、パブリック・クラウドの利用が増えていくと、自社でシステムを保有するというITグループ会社の存立の大前提が崩れることになり、ITグループ会社を保有する目的の見直しが必要になると考えられる。

推奨事項:
日本の大手企業がITグループ会社を設立したのは、1980年代後半から1990年代前半にかけてであり、設立から既に20年以上になるITグループ会社も多い。現在は、この歴史的背景や、パブリック・クラウドの利用の割合も少ないことを受けて安定した時代であると考えられる。しかし、自社においてITグループ会社を保有する目的が継続的に満足されるためには、自社のクラウド利用の方針や、自社とITグループ会社の人件費比較を中心に毎年見直しを行う。また、人事関連の仕組みの変更には時間がかかるため、気が付いたら身動きできない状態になっていたということがないように、ITグループ会社の設立や要員の採用に当たっては、通常のIT戦略計画のレンジ (3年程度) を超えた視点を持つことが必要である。
IT資産管理

2013年において、SAMを実施している企業の90%は、ライセンス取得契約との突き合わせが不完全である。そのため、2015年まで、ベンダーのライセンス監査に耐えられないリスクが存在する

分析:松原 榮一

主要な所見:
ソフトウェア・ベンダーからのライセンス監査の申し入れは、2011年に引き続き2012年にも行われている。これは、ソフトウェア・ベンダーが本来得られるはずの収益を確保する活動として、ライセンス監査を行っているためと考えられる。PCソフトでも1本当たり数十万円するものがあることから、100台以上の規模でのコンプライアンス違反では、対応に数千万円以上掛かるケースも存在する。

ユーザー企業のSAMの実施状況については、日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) がソフトウェア資産管理の説明会への出席者に対して行ったアンケート結果 (備考2参照) でも、実施している企業が31%、構築中の企業が18%、検討中の企業が24%となっており、従業員規模5,000人以上の企業では41%が実施していると報告されている。

一方、SAMの成熟度についてはレベル2 (ある程度、組織的な体制があり、継続して管理を実施している) と回答した企業が27%と最も多く、十分な成熟度を確保できていないことがうかがえる。これは、ガートナーが受けたインクワイアリの内容からも確認できており、インストールされているソフトウェアのインベントリを取得できていて、ソフトウェア購入契約との突き合わせまでできていた企業は非常に限定的であった。

市場への影響:
ソフトウェア・ベンダーからのライセンス監査は、今後も減ることがなく、ユーザー企業は、正当に取得したライセンスであること、さらには契約に違反することなく正しく利用していることを示す必要に迫られる。したがって、ユーザー企業は、ソフトウェアのライフサイクル・コストを計算する際には、正当なライセンスであることを示すために必要な作業や仕組みをつくるコストを含めて検討すべきである。特に、クラウドによりサービスとしてソフトウェアが提供される場合との比較においては、オンプレミスの費用にこの要素を加えて比較することが重要になる。

推奨事項:
SAMは、年に1回の棚卸しのみで対応するのではなく、利用部門からの資産の調達依頼に始まり、ハードウェアの廃棄、ソフトウェアの利用終了に至るまでの変化・推移をプロセスに組み込んで実施する。これにより、資産管理の品質、資産管理業務の生産性を向上させることができる。このプロセスを実現するためには、情報システム部門トップのリーダーシップによる、ポリシーの設定やプロセスの設計を行う体制の整備が必要となる。

備考1 JUAS『企業IT動向調査2013』
調査期間:2012年10月〜11月

備考2 JIPDEC『平成23年度ソフトウェア資産管理 (SAM) に関する説明会実施報告』(平成24年3月)
http://www.isms.jipdec.or.jp/sam/doc/H23_SAM_seminar.pdf
ITM: ITM-13-23


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