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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

イメージ 2013年のアウトソーシング・トレンド:複数のITサービス・プロバイダーを統合し管理する方法

ソーシング&ITサービス (SOR)/SOR-13-28
Research Note
H. Huntley
掲載日:2013年7月9日/発行日:2013年5月15日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2013年7月26日(金)に開催する「ガートナー アウトソーシング&戦略的パートナーシップサミット2013 」 のページを是非ご覧ください。本サミットでは、ITリーダーが今後求めるべき、日本と世界の良さを併せ持つ「ニッポン型アウトソーシング」について考察します。
(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)

 

本リサーチノートは「Gartner on Outsourcing, 2013」シリーズの一部である。ソーシング・マネージャーは多くの外部プロバイダーを利用しているが、彼らを効果的に統合/管理できていない。マネージャーは、ベンダー間のコラボレーションに関する期待事項の定義、構造化されたガバナンスの適用、パフォーマンス評価指標の調整を行わなければならない。

要約

影響

    ●顧客が適切なフレームワーク、プロセス、ガバナンスを確立しない限り、ITベンダー同士の協力関係が自然に実現することはない。

    ●ベンダーとの関係が、ベンダーごとにサイロ化された状態で構成/管理/報告されている場合、企業はエンド・ツー・エンドの見通しを立てられない。

    ●ベンダー間のパートナーシップを管理できるような強力なベンダー管理 (VM) を行わないと、各ベンダーとの個別契約の範囲を超えるような対応において、ベンダー間の相互協力がうまくいかず、ビジネスに混乱が生じる可能性が高まる。

推奨事項

    ●自社内で複数ベンダーが協業する方法を計画し、ガバナンス・フレームワークとコラボレーションの期待事項を提案要請書 (RFP) と契約において定義する。

    ●ベンダーからより協力的な行動やパフォーマンスを引き出すのに適した、評価基準およびインセンティブを、ベンダー契約の条件に明記する。

    ●社内に統制の取れた優れたVMが存在することを確認するか、または社外からのソーシングを行う前に該当するスキルを獲得する。特にマルチベンダーのデリバリ手法を採用する場合は、VMの監視が必要である。

分析
IT部門はベンダーによって強みが異なることに気付いているため、複数ベンダーによるデリバリ・モデルを広く採用している。ベンダーも、自社ならではの強みについてマーケティングやブランディングを強化している。このモデルでは、各ベンダーのコア・コンピテンシを利用し、競合環境を創出し、リスクを緩和する一方で、企業に対するデリバリの複雑性が高くなる。

複数ベンダーを利用する顧客のシステム環境の多くにおいて、ベンダーは各契約の対象内でデリバリを行う。その際、同一顧客のエコシステム内でデリバリを行う他ベンダーとの相互関係は想定していないに等しい。このため、定義済みのプロセスが欠如し、監督内容に一貫性がなく、ベンダー間の相互運用に関する理解が統一されていないと、企業内で業務が混乱する恐れがある。

顧客が多くのITベンダーに依存していることも、この問題を深刻化させている。ガートナーが2012年6月にIT/ビジネス・プロセスのソーシングに関して実施した調査によると、企業の41%におけるアウトソース先のベンダー数は5社未満であるが、平均は31社である。平均を押し上げているのは主に西欧と北米の企業であるが、中南米の企業に至っては平均で51社と取引している (根拠1参照)。

2012年の主要な課題
ITデリバリの義務を果たすことに熱心な企業は、特に目先の危機的問題を解決しようとしている場合、各ベンダーとのサービス・デリバリ契約に速やかに署名しがちである。こうした戦術的な動機による1回限りの取引は、直近の課題を解決するかもしれないが、それぞれのITエコシステムを提供するベンダー間で統合やハンドオフが必要になる場合は、各ベンダーが別々に活動することで極めて複雑なエコシステムとなってしまう。

また、多くの企業は統制の取れたVMの価値を完全には理解しておらず、契約に署名するまでVMに考えが至らないことが多い (根拠2参照)。特にITベンダーに強く依存し複雑なマルチベンダー・モデルを構成している企業の場合、優れたVMが必要である。

2013年の展望
IT部門とビジネス部門のニーズをサポートするために企業が利用するベンダーは、急速に増加している。顧客1社当たりの平均ベンダー数は、3世代にわたる従来のITアウトソーシング形態を通して大幅に増えている。現在、大半の顧客は3〜5社の大手サービス・プロバイダーと取引しているほか、5〜10社のベンダーと定期的に共同作業を行っている。なお、請負作業や人材派遣など、デリバリを補完するために利用するベンダーは、この数字に含まれていない。

特に顧客が取引対象のクラウド・サービス・プロバイダーを追加する場合、この数字は大幅に増加するとガートナーでは予測している (根拠3参照)。ガートナーがクラウドに関して実施した別の調査によると、パブリック・クラウド (特にサービスとしてのインフラストラクチャ [IaaS]) 市場では、違いが比較的小さくても積極的にベンダーを乗り換える顧客の姿が浮かび上がる (根拠4参照)。そのため、複数ベンダーの管理はさらに煩雑になる。

図1 複数サービス・プロバイダーの利用は「基準」であり、増加している
図1
出典:ガートナー (2013年2月)

以下に示す影響と推奨事項は、企業が複数ベンダーをより効果的に管理する方法に対応するものである。

図2 ソーシング・マネージャーへの影響と主要推奨事項
図2
出典:ガートナー (2013年2月)

影響と推奨事項

顧客が適切なフレームワーク、プロセス、ガバナンスを確立しない限り、ITベンダー同士の協力関係が自然に実現することはない
ITベンダー同士の協力関係は自然に実現することはなく、協力関係の欠如はコスト増をもたらす。マルチベンダー環境では、エンド・ツー・エンドのサービス・デリバリの保証に対し顧客が責任を負うことが多く、対処できない場合は提供されるサービスの価値が低下し、システムの運用上やビジネス上、課題と混乱をもたらす可能性がある。

企業は、マルチベンダー戦略の一環として、社内外のベンダー間の協力関係という重要な問題を解決しなければならない。解決策は、サービス・プロバイダー間およびサービス・プロバイダーと自社とのサービス管理をめぐるガバナンスの仕組み、標準、プラクティスにある。

マルチベンダー環境におけるソーシング契約には、共通のサービス・デリバリ用語 (ITインフラストラクチャ・ライブラリ [ITIL] 用語など) の採用を義務付ける規定を盛り込むべきである。また、企業側の利益のために協力するベンダーに関して、業務基準と測定可能な義務を契約に記載すべきである。ソーシング契約には、ガートナーが運用レベル合意 (OLA) と呼んでいる条項を含める。この条項の内容は、運用手続きとコラボレーションの原則、全当事者が合意する共通原則の一覧、複数分野にわたる問題/関連問題/変更管理プロセスへの対処方法の概要、問題/紛争解決手続き/エスカレーション・プロセスの概要をセットにしたものが一般的である (根拠5参照)。

相互運用性を確保し、ベンダー間のパフォーマンスを評価するために、ベンダー、ガバナンス、プロセスの違いを超えた協力を求める意向をRFPに記述することも極めて重要である。ベンダー間の協力が期待されている案件に入札するベンダーは、協力に向けた共通のルールを理解しなければならない。

推奨事項:

    ●自社内で複数ベンダーが協業する方法を計画し、フレームワークとプロセスをRFPと契約において定義する。

    ●エンド・ツー・エンドのデリバリを管理するサービス・インテグレーターの採用を検討する。

    ●より協力的な行動やパフォーマンスに適した、ベンダーのパフォーマンス評価基準およびインセンティブを、OLAのようなベンダー契約の条件に明記する。

ベンダーとの関係が、ベンダーごとにサイロ化された状態で構成/管理/報告されている場合、企業はエンド・ツー・エンドの見通しを立てられない
SLAは、顧客が契約を通じてデリバリ状況を評価したり、デリバリ標準を契約に組み込んだりするための手段である。顧客は、すべてのアウトソーシング契約において、SLA作成時に同一のプロセスを採用すべきである。このSLA作成プロセスは、プロセスの定義、評価、検査、修正、ガイドから構成される (根拠6参照)。同じ作成プロセスを一貫して採用することによって、すべてのベンダー契約に標準的な形式が適用されているのでなければ、顧客は膨大な作業と多大なフラストレーションなくしてエンド・ツー・エンドのサービス・レベルを確保できない。これはすべての契約でSLAを統一する という意味ではない。ただし、パフォーマンス評価基準を設定する際は、同一のプロセスを採用する。

SLAに関する報告も、すべてのベンダー契約について同じスケジュールに従って行うべきである。それが実現すると、顧客はエンド・ツー・エンドの評価に利用するデータの対象期間を統一することができる。例えば、前月の評価に関係するSLA報告書は、当月第1週の末日までに提出しなければならないという規定をアウトソーシング契約に盛り込む。この手法を採用すれば、全ベンダーが同一のSLAの報告期間に提出するようになる。

それに加えて、自社の主要パフォーマンス指標 (KPI) のダッシュボードに評価指標をアップロードすることを、契約を通じてベンダーに義務付けなければならない。送信方法とアップロード形式に関する規定をRFPに明示する必要がある。RFPにおいて、この評価指標の提出を早期に規定し、最終的な交渉に基づく契約に確実に記載する。

推奨事項:

    ●すべてのベンダー契約でSLAの構成を統一する。

    ●すべてのベンダー契約について、SLAの報告を同じスケジュールで行う。

    ●自社のKPIダッシュボードにSLA評価指標をアップロードすることを、契約を通じてベンダーに義務付ける。

    ●シームレスなエコシステムとエンド・ツー・エンドの可視性を実現するために、社内チームにもサービス・レベル評価指標の報告を義務付ける。

ベンダー間のパートナーシップを管理できるような強力なVMを行わないと、各ベンダーとの個別契約の範囲を超えるような対応において、ベンダー間の相互協力がうまくいかず、ビジネスに混乱が生じる可能性が高まる
顧客によるVMはあらゆるベンダーにとって重要であり、相互依存性が極めて高く、デリバリ中に発生する問題のハンドオフを行うベンダーが複雑なエコシステムを構成している場合は、言うまでもない。ただし、多くの企業はVMを過小評価しており、投資も不十分である。

VM業務は、たとえ行われているとしても社内全体に分散していることが多い。企業はITベンダーへの依存を高めるとともに、複雑性の高いマルチベンダー・モデルを構築しているため、統制の取れたVMの重要性を認識しなければならない。このアプローチは、単なる契約条件の管理を超えて、コラボレーション、イノベーション、ベンダー・パフォーマンスの分野に及ぶ (根拠7参照)。

統制の取れたVMはまた、企業がRFPを発行して1回限りのアウトソーシング契約に署名する前に、ベンダーを協力させる方法について熟慮しなければならないために必要とされる。この活動は、VMオフィスなどの正規のグループが設けられている場合は特に、社内でのベンダー /ソーシング管理に理想的に適している。

ベンダーとの取引を効果的に管理してアウトソーシング関係から最大限の価値を得るために、適切な規律とスキルを社内に確立できるよう、アウトソーシングに向けた意思決定を行う前にVMを検討しなければならない。また、顧客は、VMの目標と戦略がビジネスの目標と戦略に一致していることも確認する必要がある。

特に大規模で重要性の高いアウトソーシング取引では、取引ごとに別のベンダー・マネージャーが割り当てられることが多い。この場合は、対象となる複数の契約の間で、複数ベンダーによる製品やサービスのデリバリから生じる問題に関して、ベンダー・マネージャー間で手続きとガバナンスを連携させなければならない。

推奨事項:

    ●アウトソーシングを行う前に、社内に統制の取れる有能なVMが存在することを確認するか、または該当するスキルを備えた人材を獲得する。

    ●個別の取引を担当するベンダー・マネージャー間で、プロセスとガバナンスを確実に連携させる。


推奨リサーチ
・ 「Introducing Gartner's Vendor Management Framework: Designed to Improve Control, Reduce Risk and Drive More Value from Your Vendors」
・ 「Toolkit: OLA Readiness Assessment」
・ 「Compare Dashboard Tools for Effective Vendor Management of Outsourcing Deals」
・ 「アウトソーシング契約を成功させるサービス・レベルを設定し、利用するには」(SOR-13-18、2013年3月19日付)
・ 「Contracting for a Multisourcing Service Integrator Provider」

根拠

1. 2012年6月に、ガートナーがIT/ビジネス・プロセスのソーシングに関して実施した調査

2. 「Introducing Gartner's Vendor Management Framework: Designed to Improve Control, Reduce Risk and Drive More Value From Your Vendors」

3. ガートナーによる調査の要約:2005年以降、企業がITアウトソーシングに関して利用する外部サービス・プロバイダー (ESP) の平均数は、全世界で約3.7社から10社以上に増加している。新興のクラウド・サービス・デリバリ・モデルの拡大と相まって、顧客が管理すべきサービス・プロバイダーは増加の一途をたどる見込みである。

詳細については、以下のリサーチを参照されたい。
・ 「User Survey Report: Strategies for IT Outsourcing, Worldwide, 2005」
・ 「User Survey Analysis: Economic Pressures Drive Cost-Oriented Outsourcing, Worldwide, 2008-2009」
・ 「Survey Analysis: Outsourcing and IT Services Priorities, Europe, 2010」
・ 「Survey Analysis: End-User Trends in Infrastructure Utility Services and Infrastructure as a Service」
・ 「Understand the Three Generations of Outsourcing to Improve Deal Outcomes」

4. 「User Survey Analysis: How Public Cloud Strategies Impact Established IT Services Spending」

5. 「Determining the Difference Between SLAs and OLAs」

6. 「アウトソーシング契約を成功させるサービス・レベルを設定し、利用するには」(SOR-13-18、2013年3月19日付)

7. 「Introducing Gartner's Vendor Management Framework: Designed to Improve Control, Reduce Risk and Drive More Value From Your Vendors」

8. ガートナーの顧客インクワイアリ・データベースを見ると、2011年1月から2012年12月にかけて、複数ベンダーに関して寄せられた電話によるインクワイアリの大半は、ITサービスのソーシング (62.5%) とビジネス・プロセス・サービス (25%) に関連するものであった。このトピックに関する電話の発信元は、大半 (71.43%) が米国内の顧客であった。インクワイアリが最多であった業界は製造業 (37.5%) であり、次いで保険、米国連邦政府機関、医療の順であった。

(監訳:澤井 美佐子) 
SOR: SOR-13-28

※本レポートの無断転載を禁じます。

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